移行期支援を考える

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医療の進歩により、小児慢性疾患をもつ子どもの生命予後が改善し、医療支援を必要としながら成人期に達する者が増加しています。
30年程前に比べ、小児慢性疾患患児の死亡率は3分の1に減少しており、年々、継続的な医療支援を必要としながらの生活を余儀なくされる、小児期発症の慢性疾患をもつ患者が増加しています。

このことに関連し、2010年日本小児科学会は「小児発症疾患を有する患者の移行期医療に関する提言」を公表し、その中で今後「移行期にある患者」と称することとし、患者各々に相応しい成人期医療への移行を目指す考えが示されました。
現在の医療において、小児期発症の慢性疾患をもち成人期に達した方々を小児期医療で対応するのか、成人期医療で対応するのかが重要な課題となっております。現状、明確な決まりはないものの我が国では慣例的に小児期医療対象年齢は15歳までとし、16歳以降は成人期医療へ移行することが多い傾向が見受けられます。

しかし、実際小児期発症の慢性疾患をもつ患者の多くは、16歳以降も小児期医療(一般的に小児科と言われています)を受診し継続的な支援が行われ、その中には、青年期に達した年齢の方が含まれており、成人期医療への移行が円滑に進んでいない現状であると言えます。
これまでに、移行期にある方々への支援については、医師を対象とした研究や子どもや家族への支援のありかたについては多方面から検討されたり、提言されたりしております。
一方、成人期医療への移行のために子どもや家族への関わり多い看護師が果たすべき役割や提供する支援、看護師の移行期医療に関する認識や実態についてはほとんど検討されていません。チーム医療の観点からも移行期医療やその支援に対する看護師の果たすべき役割や提供する支援を明確にし、実践していくことは円滑な成人期医療への移行のために必要不可欠であると考えます。

小児期発症の慢性疾患をもつ子どもと家族に対し、看護師が担うべき役割や具体的な看護支援内容が臨床場面で実践されることで、小児期早期から成人期医療への移行を見据えた支援が可能となり、子どもと家族の意思を尊重した移行を可能にすることはもとより、現在生じている移行問題を解決する一助になると考えます。また、移行が円滑に進むことで患者は、加齢に伴う疾病構造の変化や身体・精神的変化に合わせた年齢相応の医療を受けることが可能になると考えております。

慢性疾患をもつ子どもや家族、そして移行期を迎えた方々と関わる皆様とともに、看護の側面から、未来多き子ども達の移行期支援について考えることができましたら幸いに存じます。

2024年3月

三重県立看護大学 小児看護学 前田貴彦